2012年3月31日土曜日

腎疾患病態解明グループ | 京都大学医学部附属病院 循環器内科


研究内容

腎臓は他の臓器と比べてわかっていないことがとても多い。だからこそ、面白い。

私達のラボでは下の2つの研究課題を目標にしています。

研究課題1:腎臓病の進展増悪因子を同定し、それを標的とした治療法を探る

腎臓におけるこの10年のもっとも大きいパラダイムシフトは何かということには諸説あると思いますが、「1型糖尿病患者さんに膵島移植をすると、糖尿病性腎症が回復した(NEJM1999)」という論文は画期的でした。
これは、腎臓病は増悪因子を取り除くことで治りうるということを示しています。
私達はこれまで、Gas6とUSAG-1という二つの腎臓病の増悪因子を同定し、それを標的とした治療法の可能性について示してきました。


なぜ尿を使うのか?

私達が同定した腎障害増悪因子USAG-1についてご紹介します

近年、腎疾患モデルにBMP-7(Bone Morphogenetic Protein)を投与すると障害尿細管が修復され腎機能が回復することが報告されました。これは腎不全からの回復という点で画期的ですが、他臓器への広範な副作用が問題です。 私たちは新規BMP拮抗分子USAG-1を発見し、USAG-1が腎臓の遠位尿細管特異的に発現していることを見いだしました(図1:Yanagita M et al. BBRC 2004)。
さらにUSAG-1ノックアウトマウス(以下USAG-1 KO)を作成し、KO が野生型(WT)に比して尿細管障害に抵抗性であることを見いだしました(図2:Yanagita M et al. JCI 2006)。
USAG-1 KOではBMPシグナルが増強しており、KOにBMP-7の中和抗体を投与すると腎障害抵抗性が消失することから、USAG-1 KOの腎障害抵抗性はBMPシグナルの増強を介したものであると考えられました。
以上の結果よりUSAG-1の中和抗体やUSAG-1とBMP-7 の結合阻害剤には腎疾患治療薬としての可能性があると考えられます(図3:Yanagita M et al Kidney Int 2006)。
USAG-1の発現が腎臓特異的であるため、このような薬剤はBMP-7自体のよりも副作用が少ないと予想されます。 さらにごく最近、大学院生の田中さんが、マウス腎障害モデルにおいて、経過中の腎生検サンプルにおけるUSAG-1発現が多いほど、将来の腎機能が悪いことを証明しました(図4:Tanaka M et al. Kidney Int in press)。
Tanaka M et al.<br style=

猫はどのように多くのカロリーを必要としません
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つまりUSAG-1は腎予後マーカーとして有望だと言えます。USAG-1はその発現が腎臓に特異的であること、発現量が多く、変動幅が大きいことなど、よいバイオマーカーとしての要件を備えています。

研究課題2:腎臓の機能単位であるネフロンはどのようにして成熟するのか

ネフロンは腎臓の機能単位であり、その数は大体100万程度で一定とされてきましたが、最近その数に30万から110万と数倍の差があること、腎ネフロン数が少ないと、将来高血圧や腎障害進展のリスクが高いことが報告されてきました。しかしながら、そのネフロン数決定に関する分子基盤は明らかになっていません。
さらにネフロン形成の過程では均一な間葉系細胞から糸球体、近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管といった様々なセグメントが形成されますが、そのセグメント特異的な分化のメカニズムはほとんど明らかになっていません。
私達は遺伝子改変マウスを用いて、ネフロン数決定およびネフロンのセグメント毎の分化のメカニズムについて研究を進めています。


マラリアを取得しない方法

発表論文

  1. Atsuko Yoshioka, Tomokatsu Ikawa, Masamichi Muramatsu, Aris N Economides, Akira Niwa, Tomohiko Okuda, Andrew J Murphy, Toshio Heike, Tatsutoshi Nakahata, Hiroshi Kawamoto, Toru Kita, and Motoko Yanagita
    Hematological toxicity and illegitimate chromosomal recombination caused by the systemic activation of CreERT2 (in submission)
  2. Mari Tanaka, Shuichiro Endo, Tomohiko Okuda, Aris N. Economides, David M. Valenzuela, Andrew J. Murphy, Elizabeth Robertson, Takeshi Sakurai, Atsushi Fukatsu, George D. Yancopoulos, Toru Kita, Motoko Yanagita Balance between BMP-7 and Uterine sensitization-associated gene-1 (USAG-1), a novel BMP antagonist in kidney disease and development Kidney Int. in press.
  3. Murashima-Suginami A, Takahashi K, Kawabata T, Sakata T, Tsukamoto H, Sugai M, Yanagita M, Shimizu A, Sakurai T, Slavkin HC, Bessho K.
    Rudiment incisors survive and erupt as supernumerary teeth as a result of USAG-1 abrogation.
    Biochem Biophys Res Commun. 2007 Aug 3;359(3):549-55.
  4. Motoko Yanagita, Shuichiro Endo, Katsu Takahashi, Tomohiko Okuda, Fumihiro Sugiyama, Satoshi Kunita, Satoru Takahashi, Atsushi Fukatsu, Toru Kita, Takeshi Sakurai
    USAG-1, a novel BMP antagonist abundantly expressed in the kidney, accelerates kidney injuries.
    J Clin Invest. 116: 70-9, 2006.
  5. Motoko Yanagita
    Modulator of bone morphogenetic protein activity in the progression of kidney diseases. Kidney Int. 70(6):989-93, 2006
  6. Motoko Yanagita
    BMP antagonists: their roles in development and involvement in pathophysiology Cytokine & Growth Factor Reviews 16:309-17, 2005.
  7. Kojiro Nagai, Takeshi Matsubara, Akira Mima, Eriko Sumi, Hiroshi Kanamori, Noriaki Iehara, Atsushi Fukatsu, Motoko Yanagita, Toru Nakano, Yoshikazu Ishimoto, Toru Kita, Toshio Doi, Hidenori Arai
    Gas6 induces Akt/mTOR-mediated mesangial hypertrophy in diabetic nephropathy. Kidney Int. 68:552-61, 2005.
  8. Motoko Yanagita.
    The role of the vitamin K-dependent growth factor Gas6 in glomerular pathophysiology. Curr Opin Nephrol Hypertens.13: 465-70, 2004.
  9. Motoko Yanagita, Masako Oka, Tetsuro Watabe, Haruhisa Iguchi, Atsushi Niida, Satoru Takahashi, Tetsu Akiyama, Kohei Miyazono, Masashi Yanagisawa, Takeshi Sakurai
    USAG-1: a bone morphogenetic protein antagonist abundantly expressed in the kidney. Biochem Biophys Res Commun. 316: 490-500, 2004.
  10. Motoko Yanagita
    Gas6, warfarin, and kidney diseases.

    Clin Exp Nephrol. 2004;8(4):304-9.
  11. Kojiro Nagai, Hidenori Arai, Motoko Yanagita , Takeo Matsubara, Hirokazu Kanamori , Toru Nakano, Noriyuki Iehara, Atsushi Fukatsu, Toru Kita, Toshio Doi. Growth Arrest-specific Gene 6 is involved in glomerular hypertrophy in the early stage of diabetic nephropathy.
    J Biol Chem. 278;18229-18234, 2003.
  12. Motoko Yanagita, Yoshikazu Ishimoto, Hidenori Arai, Kojiro Nagai, Tsuyoshi Ito, Toru Nakano, David Salant, Atsushi Fukatsu, Toshio Doi, Toru Kita
    Essential role of Gas6 for glomerular injury in nephrotoxic nephritis
    J Clin Invest. 110;239-46, 2002.
  13. Motoko Yanagita, Hidenori Arai, Toru Nakano, Kazumasa Ohashi, Kensaku Mizuno, Brian Varnum, Atsushi Fukatsu, Toshio Doi, Toru Kita
    Gas6 induces mesangial cell proliferation via latent transcription factor STAT3
    J Biol Chem. 276;42364-42369, 2001.
  14. Motoko Yanagita, Hidenori Arai, Kenji Ishii, Toru Nakano, Kazumasa Ohashi, Kensaku Mizuno, Brian Varnum, Atsushi Fukatsu, Toshio Doi, Toru Kita
    Gas6 regulates mesangial cell proliferation through Axl in experimental glomerulonephritis
    Am J Pathol. 158;1423-32, 2001.
  15. Motoko Yanagita, Kenji Ishii, Harunobu Ozaki, Hidenori Arai, Kazumasa Ohashi, Kensaku Mizuno, Toru Nakano, Toru Kita and Toshio Doi
    Mechanism of inhibitory effect of warfarin on mesangial cell proliferation
    J Am Soc Nephrol. 10;2503-9, 1999.

出版物

  1. Motoko Yanagita
    BMP antagonists and kidney. (book chapter)
    "Bone Morphogenetic Protein: From Local to Systemic Therapeutics",
    edited by Vukicevic Slobodan, PhD, and Kuber Sampath, PhD. Birkhauser, Springer Verlag, in press.
  2. Motoko Yanagita
    Uterine Sensitization Associated Gene-1 (USAG-1): A Bone Morphogenetic Protein Antagonist in the Kidney. (book chapter)
    "TRANSFORMING GROWTH FACTOR-β IN CANCER THERAPY",
    edited by Sonia B.
    Jakowlew, PhD, Humana Press, in press
  3. 柳田素子 内科学会雑誌
    医学と医療の最前線 第96巻 第10号印刷 2007年10月10日
    腎障害とBMP (Bone Morphogenetic Protein)
  4. 柳田素子 Annual Review腎臓2006
    BMP-7と腎臓特異的BMP拮抗分子USAG-1
  5. 柳田素子 医学のあゆみ
    新規BMP antagonistであるUSAG-1(Uterine sensitization-associated gene-1)は腎不全治療薬のターゲットである
  6. 柳田素子 医学のあゆみ
    腎病変の発症進展に果たすGas6の役割
  7. 柳田素子 化学と生物
    USAG-1、BMP、そして腎不全治療薬の開発
  8. 柳田素子 「腎と透析」 これだけは知っておきたい分子腎臓学2007
    BMP, Gas6の2項

受賞歴

  • 2007年  CKD award 2007 最優秀賞
  • 2005年  日本臨床分子医学会 学術奨励賞
  • 2004年  日本血管生物医学会 Young Investigator Award
  • 2004年  社団法人日本腎臓学会 腎臓学会財団賞 大島賞
  • 2002年  財団法人成人血管病研究振興財団 岡本研究奨励賞
  • 2000,2001,2004年 分子腎臓研究会 最優秀研究賞
  • 2007年から国際腎臓学会のYoung Nephrologist Committee memberとして活動

メンバー募集

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