「コンテイジョン」バット・エフェクト=蝙蝠の羽ばたきが世界を恐怖に落とした!~新作評-Ⅳ|CinemaNavi21
いよいよストーリー紹介の完結編。「感染133日目」からラスト・カットまで書き進めることにする。
【ストーリーの流れとチェック・ポイント】
〔感染133日目〕
政府においては、ワクチンの手配が進み始めたが、国民全員に投与できるだけの数量の確保には至っていない。
このため、記者会見を行って、抽選方式で投与する順番を決めることになった。
アメリカ合衆国の人口は、3億人を超える。人口減少国となった日本と違って、先進国では数少ない人口増加国であり、自由平等の国であるだけに、どういう方法で優先順位を決めるかは、私も大いに気になった。
本作で採用された方法は、極めてシンプルであり、反対にくい妙案だ。
次のシーンで、その決定の場面が映し出される。
ホールのような場所が抽選会場だ。そこに小さなボールの入った箱が置かれ、それぞれのボールには日付が書かれている。
抽選者が取り出したボールには3月10日と書かれていた。この順番で、それぞれの日に生まれた人に優先的に投与されていくのだ。
問題は、毎日、1つの誕生日に属するグループの人たちにしか投与されないことだ。
ミッチの娘ジョリーは1月15日生まれ、144番目だった。
ミッチは、5ヵ月後のその日まで彼女を外出させないことにした。←CHECK POINT
次の場面は、マカオだ。レオノーラが子供たちに勉強を教えている。
誘拐グループのメンバーが、彼女を呼びに来る。
ここで彼女が誘拐された目的が明らかになる。この住まいに避難させたフェンの故郷の人たちに投与できる分のワクチンと彼女を交換する交渉が成立し、その取引の日がやって来たということだった。
取引で誘拐グループが手に入れるワクチンが、どこの国の製品かということも問題にされる。なかなか芸が細かい。
香港までワクチンを持ってきた男は、誘拐グループにワクチンだけ持ち逃げされたかと思ったが、彼らの車が走り去った後にはレオノーラが残されていた。
2人は、帰国のため空港に向かう。空港ロビーで、交渉に当たった男から、渡したワクチンは偽物であったことを知らされる。←CHECK POINT
本物を渡さなかったのは、中国政府の要請ということだった。
これは、中国政府が麻薬犯に対して極刑を科すのと同様、誘拐犯を許さないというよりも、庶民層が優先的に外国製のワクチンの投与を受けるということ自体が認められないということではないのか。
そう、アメリカとは違って、中国では、国民に対してどのようなルールでワクチンが投与されるかは、本作では明かされていないのだ。
この事実を知ったレオノーラは、彼女を取り戻しに来た男の前から立ち去る。
誘拐グループのアジトに戻るためだが、引き渡されたワクチンが偽物であったことを伝えて、何をしようとするのか。←CHECK POINT
本作の後日譚として気になることの1つだが、いわゆるストックホルム症候群(ストックホルム・シンドローム)に彼女が陥ったという側面もあるだろう。
4ヵ月もの間の軟禁状態で、誘拐犯たちよりも、罪のない家族たち、とりわけ子供たちへの同情が、彼らを見捨てて、本国へ帰国することを許さなかったのかも知れない。
あるいは、そうした人間としての良心のほかに、医師としてやるべきことがあると思ったのかも知れない。
いずれにしても、WHOは再交渉に応じないだろうし、彼女に人質としての利用価値がないと誘拐グループが判断したとき、どう出るかは分からない。ウィルスが彼女の運命を大きく変えたことだけは間違いない。
警察で取り調べを受けるアラン。
逮捕の時点で、彼のブログへのアクセス数は1,200万という驚異的な数字に達していた。
レンギョウが新型ウィルスに効くというのは嘘で、アランは感染していなかった。だから、外出するとき過剰とも思える防護装備を着けていたのだ。←CHECK POINT
彼のデマゴギーで利益を得る会社などと結託して、レンギョウの売り上げ増から450万ドルもの利得を手にしていたことが、容疑の対象だった。
取り調べに当たってる刑事は、パソコンごと彼を投獄したいと憤っている。
だが、彼のブログを支持する読者たちが保釈金をカンパして、彼は釈放される。←CHECK POINT
心臓の上部と下部チャンバーは何ですか
このオチが、ソダーバーグらしい。彼は、ネットを悪用するブロガーたちを非難しているというよりも、その記事を支持する、姿の見えないネット・ユーザーたちの方を問題視しているように感じるからだ。
無職の私としては、ネットに記事をアップするだけで、それだけの収入が得られるというのは、正直、羨ましい面もある。
私のブログと違って、「自分のブログを読んでから観る映画を決めている読者が多い」という、いかにもと思える惹句を売りにしている映画ブログもあるが、その記事を信用して映画を観て騙されたと思っても、たかだか損をするのは2千円程度だ。
本作のようにパニックが起きたとき、マスコミ情報を含めて信用できる情報を見極めるのは容易ではない。政府が発表する情報すら信用できない状態に陥ったとき、人は何を拠り所として行動すべきか、そんなシミュレーションを観客自身に求めるのが、本作の一番の狙いかも知れない。
もう1人のスケープゴートとなったチーヴァー博士はどうなったか。
別にCDCの地位を追われた訳ではなく、映画で観る限り、通常業務をこなしているようだ。
それどころか、オーブリーと結婚することになる。災い転じで福をもたらすというか、チーヴァーの立場が危うくなったことで、2人の絆は強まったということだろう。
そもそも彼が彼女に漏らした情報が、それほどの機密情報とは思えない。
専門家であれば、誰でも普通の判断で助言するレベルの内容であり恋人に機密漏洩したと、、ネットで過激に書かれたことで、彼をパッシングする世論が形成され、スケープゴートを求めていた政府高官が利用したというのが実態でないかと思う。
チーヴァーはCDCにとって余人をもって代えがたい人物で、彼を切ることは組織の弱体化に繋がる。
だから、マスコミの矢面に立たさない処置をすることにより、謹慎という体裁を整えたのではないのか。
いずれにしても、海軍少将のハガティが告げたように、チーヴァーには聴聞会への出席とその裁定が待っており、アランにも刑事訴追のおそれが残っているが、2人が、名実共にスケープゴートとされ、死に体で終わるという結末にはなっていないことに注意する必要がある。
CDC内のチーヴァーの部屋に、メンテナンス担当のロジャーと息子のアンソニーが来ている。
チーヴァーの電話を立ち聞きしたロジャーは、彼への信頼感を損なったが、知人である自分の息子に彼が特別の配慮をしてくれることで、2人の関係は元に戻ったようだ。
そう、抽選の順番を待っていたのでは、ADHD(注意欠陥多動性障害)の治療以前に、ウィルスに感染するおそれがあることから、チーヴァーが特別にアンソニーにワクチンを投与してくれたのだ。←CHECK POINT
このワクチンが、医療関係機関に従事する者に優先的に配分される枠のワクチンなのか、チーヴァー自身に抽選で割り当てられるワクチンの権利の先行利用なのかは分からない。
前者であれば職務上の地位を利用した許されない行為であり、後者であれば慈善的な行動と色分けするのもどうかと思う。
いずれにしても、オーブリーに対する助言も含めて、チーヴァーの人間性を批判できる人はいないと私は思うが、いかがですか?
問題は、その次のシーンだ。
スタートから90分、アンソニーへのワクチンの投与を終えたチーヴァーは、CDCの建物を出て、車に乗る。そして、車内で腕にワクチン接種済みであることを示す腕輪を填めるのだ。←CHECK POINT
彼がアンソニーに投与したワクチンが自分のものであるとすると、彼は未接種であるにも拘わらず接種済みのフリをすることになり、こちらの方が専門家の行動として許されないことになる。
そして、私の思い違いかも知れないが、彼は自宅に戻り、オーブリーに鼻からワクチンを投与するのだ。
いずれにしても、彼が親しい2人にワクチンを投与したのが、国民の優先順位を決めた当日であったことに注意する必要がある
〔感染135日〕
抽選に基づきワクチンの投与が始まった接種センターへ出向いて写真を撮るアランが映る。センターの中に入り、取材する彼は、今度は何をブログ・ネタにしようとしているのか。
一方、CDC内のレベル4の実験室に入ろうとしているアリーがいる。彼女が手にする容器には、MRV-1ウィルスと表記されている。培養を行おうとしているようだ。←CHECK POINT
ミッチの家では、ジョリーが「Jへ パパより」というメッセージを手にしている。
なぜチョコレートは犬にとって致命的ですか?
父から娘へのプレゼントの箱もある。箱の中にはドレスが入っていた。夜、自宅で父が用意したパーティが開かれるようだ。
その父親は、娘の姿を撮影するため、クローゼットでデジカメを探している。
妻が香港への出張の際に携行したカメラに記録されている画像を再生すると、カジノで撮影された妻の姿が残されいた。
妻を思い出し、感傷に浸るミッチ。浮気をされても、先立った彼女を愛していたのだろう。
飾りが付けられた部屋にドレスを着たジョリーがいる。彼女は、i-podで音楽を再生する。
アンドリューがやってきて来て、ドアを叩く。正装した彼は、ワクチン接種済みの腕輪を見せる。いち早く接種を受ける抽選に当たったということだ。
娘は、別室にいる父を呼ぶ。やっと戻ってきた父は、娘がボーイフレンドと楽しそうに踊る様子をカメラで写す。
ワクチン投与まで娘を家の中に止める日々はなお続いても、彼女は父親だけでなく、彼の公認の下、ボーイフレンドと触れ合うことができるようになったのだ。
父娘とにってこの一歩は、幸せな日々を取り戻す上において極めて大きな一歩だと思う。とりわけジョリーにとって、まだ自由に外出できなくても、心の監禁状態からは解放されたのだから。
東南アジアのジャングルなのだろう。
アルダーソン社の表示があるブルドーザーが椰子の木を伐採している。同社は、ミネアポリスに本拠を置く鉱業関係の会社のようだから、何かの鉱物の試掘でも行おうとしているのだろうか。
問題は、切り倒した1本が餌のバナナを持ち帰ろうとした蝙蝠の巣が作られたものであったことだ。←CHECK POINT
自分の住まいが失われた蝙蝠は、バナナを咥えたまま別の場所に移動し、豚小屋の中にバナナを落としてしまう。
その小屋の中の1頭が汚染されたバナナを食べる。
そう、今回のパンデミックの原因は、アメリカ本土から遠く離れた場所でアルダーソン社が自然を改変したことだったのだ。
傑作映画のタイトルにもなっているが、"バタフライ・エフェクト"という言葉がある。地球の向こう側の蝶の羽ばたきがこちら側に思いもよらぬ大きな影響を与えるという喩えだ。
日本の諺にも、「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉があるが、本作においては、巣を失った蝶ならぬ蝙蝠の羽ばたき、バット・エフェクトの恐ろしさを私たちは忘れてはいけない。
〔感染1日目〕
その豚が解体され、食用の肉として出荷され、マカオのカジノが食材として仕入れる。
ウィルスに汚染された豚肉を調理したカジノの料理長は、手を洗わないまま、係員に呼ばれてカジノのフロアに赴く。←CHECK POINT
大王製紙の前会長・井川意高ではないが、カジノの上得意に挨拶をするためのようだ。
ベスがカジノで出された料理を気に入って、シェフに会いたいと言ったのかも知れない。
彼女はウィルスに汚染された料理長と一緒に記念写真を撮る。
このとき、ベスは料理長と握手して、アメリカ人最初のウィルスのキャリアとなった!
【本作の総括】
ストーリーの再現は、いかがでしたでしょうか。
ラストのオチをあらかじめ読み切れなかったので、途中の伏線となるシーンを十分、記憶に留めることができず、不完全な部分が残ったが、本筋はフォローできたと思う。
エンドロ―ルには、CDCなどの関係機関の協力を得たことがクレジットされている。
撮影ユニットとして、サンフランシスコのほか、アタランタ、ジネーブ、ロンドンなどもクレジットされている。
最後にわざわざ、「本作はフィクションです」と出るのは、専門的な知見に基づく、実際に起き得る話をリアルに描いたという、ソダーバーグ監督の自負の現れだと思う。
〔パニック映画に必ず登場する政治家たちが姿を見せない理由とは〕
それでは、残してあった問題提起への答えを順次、書くことにしたい。
まず、「アメリカの大統領や副大統領など、普通のパニック映画に必ず登場する人物が姿を見せず、最初の発症場所である中国の政府高官についても同様の処理を行ったことは、ソダーバーグ流の仕掛けの1つだと思うが、何を意味するのか」という問題だ。
中絶はどのように行われていますか?
地震などの自然災害と異なり、新型ウィルスの発現には、人為的な要素が作用しているということが、本作で明らかにされている。
人間の経済活動などにより自然が破壊・改変されることが、突然変異の大きな要因となるのだ。それに対処するには、政治家は国民と同様に無力であり、彼らがやるべきことは、自分たちの過大な歳費を減額して、専門家たちの調査・研究費や活動費などの予算をカットしないことだ。
ウィルスが発生してしまった後の彼らのスタンドプレイは、ウィルスと同じく有害でしかない。
本作は、まず、ウィルスの発生原因・感染経路を突き止めること、ウィルスの構造を解明すること、抗体を作り、ワクチンを試作すること、ワクチンの効果を検証し、量産すること、感染した患者を隔離し、治療に当たること、感染の拡大を予測すること、不幸にして亡くなった方を速やかに埋葬するとこと、ワクチンを投与する公正なルールを作り、計画的に投与すること、ウィルスの変異を追跡することといった、専門家が行う様々な取組みを描き、映画を観る私たちに理解を促している。(ワクチン投与の効果・副作用をフォローすることのみ、問題提起に止まっている。)
いずれにしても、ソダーバーグは、これまでのパニック映画のように、1人のヒーロー、とりわけ政治家が活躍する映画にしたくなかったのだ。専門家ではないミッチも含め、登場人物が、それぞれの立場で、こうした深刻な問題が起きた場合に、どう行動し、何をなすべきかを観客が考える材料を提示したかったのだと思う。
〔べスがアルダーソン社の役員とした理由とは-ウィルス発生の要因との関係〕
次に、アメリカ人では最初の発病・死亡者となったべスが、アルダーソン社の役員とした監督の意図は何か。そのことが、ウィルス発生の要因にどのような影響を与えているか。
この問題の答えは、ストーリー編の中で触れたが、少し違う言い方で改めて説明しよう。
9.11同時多発テロを同列に扱うのは異論が出るだろうが、この設定は、グローバル化の進展の中で、アメリカが自国の利益のために経済・防衛などの活動を地球規模で展開することが、逆に、アメリカ国内の安全を脅かすことになっているという警鐘だと理解することもできる。
その意味で、今回のバタフライ・エフェクトは、ブーメラン効果と言うべきかも知れない。
〔べスがアルダーソン社の役員とした理由とは-ウィルスの感染経路との関係〕
感染経路の全体構図の面からは、べスがアルダーソン社の役員であること以上に、ゼロ号感染者の所在地がマカオであったことと、ベスの住まいがミネアポリスであることの方が影響の度合いは大きい。
ベスがカジノで接触したイギリスで活躍するモデルや日本のビジネスマンとの関係が、たまたま出会っただけの関係なのか、彼女たちもアルダーソン社が香港で開いた会議や催しに参加した人たちであったのかは、私の記憶の再現だけでは確証が得られなかった。だが、ベスと同じ日に、カジノで料理長から感染した人たちは他にもいた筈だ。
最も早くアメリカに帰国して発病したベスに的を当て、彼女から直接感染した3人、イリーナ、ビジネスマン、リー・ファイをイギリス、日本、中国本土へ感染を広げたウィルスのキャリアの代表として設定したということだろう。
ベスは、アメリカに戻って、シカゴの不倫相手ニールに感染させ、そこからシカゴの住民に広まる、ミネアポリスでは空港に出迎えたバーンに感染させ、彼から家族や通勤バスの乗客などに広がる。
また、息子のクラークからは、小学校のクラスメイトや先生たちに広がる。
さらには、ミネアポリスやシカゴの空港を利用する人たちから、航空ネットワークで結ばれた都市の人たちに広がる。もちろん、香港からの帰国便の中でも添乗員などと接触しただろう。
ソダーバーグが映画の中でクレジットした日数や感染者の数は、そうした感染経路を仮定しながら、専門家のシミュレーションに基づいた数字であると思う。
〔姿を見せないもの、言葉として出てくるだけのもので、本作では意識的に具体化させていないことや、クローズアップさせていないこととは〕
この問題についても、ストーリー編の中で幾つも指摘した。他の問題とも絡むが、再度、箇条書きで示したい。
①ワクチンの国際的な配分について、WHOはどのようなルールをつくったのか。過去の事例では、新型ウィルスを一種の貴重生物として扱い、それが発生した国がそのウィルスを基に作ったワクチンを優先的に利用する権利があるという議論が行われたとのことだ。(昨年、日本(名古屋)で開催された生物多様性条約締結国際会議で、病原体に関しても提供国に利益還元される枠組みが合意されたという。)
②アメリカ政府は、一般国民に対する優先接種ルール以外に、政府高官や医療関係者などに対して例外規定を設けたのか。これは、ラストにおけるチーヴァーの行動をどう評価するかにも関わってくる。
③本作に姿を見せない製薬会社は、全力で製品化を行ったのか。なぜアリーの人体実験の成果からワクチンの生産までに百日もの期間を要したのか。世界的な感染者の増加=マーケットの拡大を睨んでいたというような思惑はなかったのか。
また、今回のワクチンに副作用は生じなかったのか。
④その後、ウィルスが増産されて全国民へのワクチン投与には、1年も掛からなかったのかも知れないが、季節が巡って、ウィルスが変異し、ワクチンの効果が失われるおそれはないのか。
また、映画の中で、どこの国で製造したワクチンかが問題だという台詞があったが、アメリカでの感染流行は終息しても、世界的には跛行状態に陥っていないのか。
⑤テレビや新聞の報道は問題にならなかったのか。今回のアランの行動を踏まえて、アメリカ政府はネット記事の規制を行うようにならないのか。
⑥開発が進む中国の内陸部において新型のウィルスが誕生し、中国からの輸入ギョウザ問題に示されたように同国の衛生管理状態により、日本を直撃する感染が起きる可能性はないのか。
以上は、私が重要と思う問題を例示しただけで、他にも挙げることはできるだろう。
どの問題も悩ましい問題だが、日本にとって一番の脅威は、やはり⑥が十分、あり得るということだ。③の問題も、新薬の申請・認可の事務手続が煩雑な日本では、もっと時間を要し、輸入に頼るというのは新型インフルエンザでさえ起きたことだ。
今後、日本企業の中国進出が加速するとともに、日本の観光地にとっても中国からの旅行者の確保はますます死活問題となることから、中国発の新型ウィルスが日本を襲うリスクは、増大する一途だろう。
予想されたことであるのに、賃金コストの重視や護送船団方式などにより、タイの洪水で一網打尽の被害に合う程度の危機管理能力しか持たない日本企業が、本作で描かれたような強力なウィルスへの対策を取り得るとは、とても思えない。
日本の場合、危機管理能力が低いのは、官だけではないのであり、企業が従業員に手洗いやウガイの励行を求めるだけというのも、いかがなものか。
〔ウィルスの脅威から生き残るために、誰を守るのか、本作ではチーヴァー博士とアリーの行動をどう評価するか〕
最後のこの問題のうち、誰を守るのかについては、それぞれの人の生き方の問題であり、正解はないと思うので、あえて私の個人的な見解は書かない。
チーヴァー博士とアリーの行動については、評価以前の事実関係の理解が不十分であるので、正解と思える答えも書けない。
本ブログの新作評では、自信がないことは書かないことを原則としているが、本作の中で一番、気になる点であるのに、解釈に自信がないシーンがある。
それは、今回の記事中の「感染135日」の項で書いたアリーが実験室で行っていたのが何か、どういう目的で作業していのかが、分からないということだ。
その意味によっては、ラストのアルダーソン社のブルドーザー以上のインパクトを、作品の理解の仕方に与えるかも知れない。
本作の結論、それは、パニック・ミステリー映画やサスペンス・エンタテインメント映画としての出来をあれこれと言ったり、リアル過ぎて楽しめなかったと言うよりも、シミュレーション・ムービーとして、日本で同じようなことが起きる可能性や起きた場合にどうすべきかを考える材料としての評価が問題ではないか。
その意味では、ソダーバーグは、誰もやらなかった貴重な材料を提供してくれた。
本作を観た人が、私が記事で書いたようなことを考えたのであれば、映画代の元は十分取ったと言えるのであり、本作をまだ観ていなくても、4回にわたる私の記事を読んでくださった貴方は、映画も記事もスルーした人より得るところがあったと思いたい。
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