いよいよストーリー紹介の完結編。「感染133日目」からラスト・カットまで書き進めることにする。
【ストーリーの流れとチェック・ポイント】
〔感染133日目〕
政府においては、ワクチンの手配が進み始めたが、国民全員に投与できるだけの数量の確保には至っていない。
このため、記者会見を行って、抽選方式で投与する順番を決めることになった。
アメリカ合衆国の人口は、3億人を超える。人口減少国となった日本と違って、先進国では数少ない人口増加国であり、自由平等の国であるだけに、どういう方法で優先順位を決めるかは、私も大いに気になった。
本作で採用された方法は、極めてシンプルであり、反対にくい妙案だ。
次のシーンで、その決定の場面が映し出される。
ホールのような場所が抽選会場だ。そこに小さなボールの入った箱が置かれ、それぞれのボールには日付が書かれている。
抽選者が取り出したボールには3月10日と書かれていた。この順番で、それぞれの日に生まれた人に優先的に投与されていくのだ。
問題は、毎日、1つの誕生日に属するグループの人たちにしか投与されないことだ。
ミッチの娘ジョリーは1月15日生まれ、144番目だった。
ミッチは、5ヵ月後のその日まで彼女を外出させないことにした。←CHECK POINT
次の場面は、マカオだ。レオノーラが子供たちに勉強を教えている。
誘拐グループのメンバーが、彼女を呼びに来る。
ここで彼女が誘拐された目的が明らかになる。この住まいに避難させたフェンの故郷の人たちに投与できる分のワクチンと彼女を交換する交渉が成立し、その取引の日がやって来たということだった。
取引で誘拐グループが手に入れるワクチンが、どこの国の製品かということも問題にされる。なかなか芸が細かい。
香港までワクチンを持ってきた男は、誘拐グループにワクチンだけ持ち逃げされたかと思ったが、彼らの車が走り去った後にはレオノーラが残されていた。
2人は、帰国のため空港に向かう。空港ロビーで、交渉に当たった男から、渡したワクチンは偽物であったことを知らされる。←CHECK POINT
本物を渡さなかったのは、中国政府の要請ということだった。
これは、中国政府が麻薬犯に対して極刑を科すのと同様、誘拐犯を許さないというよりも、庶民層が優先的に外国製のワクチンの投与を受けるということ自体が認められないということではないのか。
そう、アメリカとは違って、中国では、国民に対してどのようなルールでワクチンが投与されるかは、本作では明かされていないのだ。
この事実を知ったレオノーラは、彼女を取り戻しに来た男の前から立ち去る。
誘拐グループのアジトに戻るためだが、引き渡されたワクチンが偽物であったことを伝えて、何をしようとするのか。←CHECK POINT
本作の後日譚として気になることの1つだが、いわゆるストックホルム症候群(ストックホルム・シンドローム)に彼女が陥ったという側面もあるだろう。
4ヵ月もの間の軟禁状態で、誘拐犯たちよりも、罪のない家族たち、とりわけ子供たちへの同情が、彼らを見捨てて、本国へ帰国することを許さなかったのかも知れない。
あるいは、そうした人間としての良心のほかに、医師としてやるべきことがあると思ったのかも知れない。
いずれにしても、WHOは再交渉に応じないだろうし、彼女に人質としての利用価値がないと誘拐グループが判断したとき、どう出るかは分からない。ウィルスが彼女の運命を大きく変えたことだけは間違いない。
警察で取り調べを受けるアラン。
逮捕の時点で、彼のブログへのアクセス数は1,200万という驚異的な数字に達していた。
レンギョウが新型ウィルスに効くというのは嘘で、アランは感染していなかった。だから、外出するとき過剰とも思える防護装備を着けていたのだ。←CHECK POINT
彼のデマゴギーで利益を得る会社などと結託して、レンギョウの売り上げ増から450万ドルもの利得を手にしていたことが、容疑の対象だった。
取り調べに当たってる刑事は、パソコンごと彼を投獄したいと憤っている。
だが、彼のブログを支持する読者たちが保釈金をカンパして、彼は釈放される。←CHECK POINT
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